今回は「大腸がん」について。
まず、今回お伝えしたいメッセージのまとめです。
① 日本人で一番多いがんは、「大腸がん」
② 40歳(50歳)を過ぎたら、症状がなくても一度は大腸カメラを受けましょう
③「下剤を飲まない大腸カメラ」+「鎮静剤」で楽に検査をうけましょう
男女あわせて考えると、「日本人でいちばん多いがん」はどこのがんでしょうか?
大腸がん
です。
男女別に見ると、
【男性】1位:前立腺がん、2位:大腸がん、3位:胃がん
【女性】1位:乳がん、2位:大腸がん、3位:肺がん
患者さんによく聞かれることが、
「腫瘍マーカー(血液検査ではかるがんの数値)は正常なので、がんは心配しなくていいですよね?」
まず、腫瘍マーカーは万能ではありません。腫瘍マーカーが少し高い場合でもがんはないこともありますし、その逆に腫瘍マーカー正常でもがんが見つかることはあります。一般的には、腫瘍マーカー高値はがんが進行しているときに見られます。がんは進行してから発見すると治癒しない場合もあり、早期発見が肝になります。早期発見(早期がん)において腫瘍マーカーはあてにはなりません。進行期の大腸がんは、がんが大きくなり、腸を塞いでしまって(腸閉塞:イレウス)おなかが痛い、という症状で見つかることが多いです。つらいことですが、このような症状で大腸がんが見つかる人を、これまでたくさんて診てきました。
大腸がんに関しては、ほとんどが「腫瘍性ポリープ(腺腫:せんしゅ)」という良性のポリープが育っていくと、大腸がん(腺癌:せんがん)になることが知られています。なので早めにポリープを見つけて切除するのが一番の予防になります。
わたしは常日頃患者さんには、「おなかの症状がなくても、検診で便の検査で引っかからなくても、40歳ないし50歳になったら、一回は大腸カメラは受けてくださいね」とお伝えしています。もちろん私自身も、40歳を過ぎたので大腸カメラを受けています。
大腸カメラは、検査当日に1〜2Lの下剤を飲んだり、とそれなりにハードルの高い検査だと思っています。下剤自体はポカリやアクエリアスのような味で個人的には嫌ではないのですが、やはり飲む量が多いですし高齢の方には検査そのものより、この下剤を飲むことが辛い、とおっしゃる方も多いです。
そんなハードルを下げるべく、当院では「下剤を飲まない大腸カメラ」を行っています。
同じ日に胃カメラと大腸カメラの両方検査する必要がありますが、胃カメラ検査時にカメラ越しに腸管内に下剤を投与します。検査終了後にトイレを備え付けの個室に移動していただきます。30分〜60分くらいすると便意を催しますので、排便していただきます。だいたい2時間くらいで便が全てでますので、その後再度検査室に戻り、大腸カメラを行います。もちろん、胃カメラ検査時も大腸カメラ検査時も鎮静剤を使い、楽に受けていただけるようにしています。この下剤の投与方法は高齢者に行っても安全性に問題ないことも報告されています(※)ので、安心して受けてください。
※ Yuki, Mika et al.Su1682 Hypertonic Low-Volume Polyethylene Glycol Injection Method via TransNasal Endoscope to Improve Tolerability of Colonoscopy Preparation: a Prospective Randomized Pilot Study.Gastrointestinal Endoscopy, Volume 81, Issue 5, AB377, MAY 2015
少しでも検査のハードルが下がり、ひとりでも多くのかたに大腸カメラを受けていただき、大腸がんなどの大病に関係のない人生を送ってほしいと願っています。