「胃が痛いです・・・」
当院は消化器内科を専門としているので、胃が痛い患者さんは多く来られます。
だいたいのかたは、「みぞおち」のあたりを指して、痛いとおっしゃられます。
さて。その痛みは、本当に「胃」からくる痛みでしょうか?
しっかり触診をして、腹部エコーでよくみると「胆嚢(たんのう)」が腫れていることがあります。
右肋骨の裏に肝臓とういう大きな臓器があり、その肝臓の裏側に「胆嚢(たんのう)」という消化液を貯めておく袋があります。ここに石(胆石)や泥(胆泥)が溜まり、炎症を起こす「急性胆嚢炎」という病気です。
痛みの場所がみぞおちに近いこともあり、「胃が痛い」とおっしゃられる方の中にこの病気が原因のことがあります。
この胆嚢炎のサインとして、右肋骨の下からおなかをぐっと押すと息が止まるような痛みがあれば、胆嚢炎の可能性が非常に高いと言われています(マーフィー徴候といいます)。
しかし、特に高齢者では胆嚢炎を起こしていても、このサインが見られない方も多く(マーフィー徴候の感度:50%弱)、触診だけでは見逃してしまうこともあります。高齢者が胃の痛みを訴えるときは、胆嚢炎の可能性も考え、腹部エコーで胆嚢をよくみることが必要です。
胆嚢炎は放っておくと、胆嚢が破れてしまい、胆嚢の中にある 胆汁という細菌にまみれた消化液が無菌空間であるおなかのなか(腹腔内)に散らばって、腹膜炎に至ることもあります。
胆嚢炎の治療としては、炎症が高度の場合は抗生剤の点滴で炎症を抑えたあとに腹腔鏡で胆嚢摘出術を行います。場合によっては、緊急手術で胆嚢摘出術を行うこともあります。
みぞおちのあたりが痛いときは、「胃」だけでなく「胆嚢」のことも念頭にいれておきましょう。
ということで、今回は胃痛(番外編)でした。
胃痛をはじめ、おなかのことでお困りの方は、なんでもご相談ください。