感染性腸炎とは
感染性腸炎は、細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が腸に感染することで発生する炎症性疾患です。
これにより、腸内の正常な働きが乱れ、下痢や腹痛などの症状を引き起こします。
感染性腸炎は、発展途上国での水や食品の衛生環境が原因となることが多い一方、先進国でも食品汚染や旅行などを通じて発生することがあります。
特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人は重症化しやすいため注意が必要です。
感染性腸炎の原因
- 細菌
- サルモネラ菌:汚染された肉や卵、乳製品が原因です。
- カンピロバクター:未加熱の鶏肉や生乳が原因です。
- 大腸菌(O157など):汚染された食品や水が原因です。
- ウイルス
- ノロウイルス:汚染された食品や水、または人から人への接触で感染します。
- ロタウイルス:主に乳幼児に多く見られ、下痢が主症状です。
- 寄生虫
- ジアルジア:免疫力が低い人に重症化することがあります。
- クリプトスポリジウム:主に乳幼児に多く見られ、下痢が主症状です。
感染性腸炎の症状
- 下痢:水様性から血性のものまで、便の状態はさまざまです。
- 腹痛:症状の進行に伴い、けいれん性の痛みを感じることがあります。
- 発熱:病原体による炎症反応の結果、発熱を伴うことがあります。
- 吐き気や嘔吐:特にウイルス性腸炎では頻繁に見られる症状です。
- 倦怠感:水分や電解質の喪失により、全身のだるさや疲労感を感じることがあります。
感染性腸炎の予防
- 手洗いの徹底:石鹸と流水でしっかり手を洗うことが最も基本的な予防策です。
- 食品の適切な調理:肉類は十分に加熱し、生野菜は流水でよく洗いましょう。
- 飲み水の安全確保:安全が確認されていない水は避け、加熱した水やペットボトルの水を使用しましょう。
- ワクチン接種:ロタウイルスワクチンは、乳幼児の重症化を防ぐために有効です。
- 適切な食品保存:食品は冷蔵保存し、賞味期限を守ることが大切です。
感染性腸炎の治療
- 軽症の場合:水分補給を行い、自然に回復することが多いです。経口補水液(ORS)を活用すると効果的です。
- 中等症の場合:医師の指導のもと、整腸剤や吸着剤が処方されることがあります。また、必要に応じて点滴による水分補給が行われます。
- 重症の場合:細菌性腸炎の場合、抗生物質を使用することがあります。ただし、ウイルス性腸炎では抗生物質は効果がないため使用されません。
- 免疫力が低下している場合:寄生虫や真菌が原因の場合、特定の抗寄生虫薬や抗真菌薬が必要です。
最近の傾向と今後の動向
感染性腸炎の発生は、国内外で増加傾向にあります。
特に、ノロウイルスによる腸炎は冬季に多発し、食中毒として大規模な集団感染を引き起こすことがあります。
一方、国際的な旅行の増加に伴い、旅行者下痢症として発展途上国から感染性腸炎を持ち帰るケースも増えています。
今後は、食品の衛生管理の向上や予防教育の徹底が求められます。
また、腸内細菌叢(腸内フローラ)を改善するプロバイオティクスや、新しいワクチンの開発が進むことで、感染性腸炎の発生率と重症化率が低下することが期待されています。